品川駅は品川区ではなくて、港区にあるというのは、品川に住み始めて驚く事実のひとつかもしれません。
さらに目黒駅は目黒区ではなくて、品川区にあるんです!
目黒駅前にはさまざまな施設がありますが、今回は目黒駅の正面にある「久米美術館」を紹介したいと思います。
目黒駅から徒歩1分のロケーション
久米美術館は、JR山手線の目黒駅から、徒歩約1分のところにあります。目黒駅西口から、道路をはさんで向かい側です。
駅からも十分見えるくらいの距離に、久米美術館のある「久米ビル」があります。
東京屈指の高級住宅街がすぐ近くに
目黒駅西口エリアといえば、東京屈指の高級住宅街。
久米美術館から少し歩くと、豪邸や高級マンションが建ち並ぶ閑静な住宅街があります。
久米美術館も、山手線の駅前とは思えないほど落ち着いた雰囲気の中にありました。
1階には久米邦武像の展示
ビルの1階には、幕末から明治にかけて活躍した歴史家の、久米邦武の胸像が展示されていました。
久米邦武は明治初期の岩倉使節団の一員として、欧米12ヵ国を歴訪。帰国後、報告書『米欧回覧実記』を執筆・編修したことで知られる人物です。
久米邦武は佐賀藩士で、もともとは東京の人ではありませんでした。
『米欧回覧実記』編修をおこなった功に対し、政府から500円(※現在の貨幣価値に換算すると1000万円程度といわれています。)という当時としては多額の報奨金が贈られ、これを資金にして、目黒駅前の広大な土地を購入。
久米美術館は、旧久米邸跡に建っているとのことでした。
黒田清輝と共に美術史をつくった久米桂一郎
8階には、久米邦武の息子で画家の久米桂一郎の作品やコレクションを展示する美術館があります。
この日は「久米桂一郎・黒田清輝と東京美術学校の教え子たち展」が開催されていました。
久米桂一郎は、パリ留学中に黒田清輝と出会い、帰国後は東京美術学校(現・東京藝術大学)に新設された西洋画科で黒田とともに教壇に立ちました。
黒田清輝とは絶妙のコンビで、盟友として紹介されることが多いそうです。
近代日本の美術に大きな足跡を残した画家・教育者の一人が品川区にゆかりのある人物だというのは新しい発見でした。
ワンフロアだけでも見ごたえ抜群
久米美術館は、久米ビルの8階のワンフロアだけが展示室。企業内美術館といってもSOMPO美術館などと比べるとかなり手狭なイメージです。
しかし、久米桂一郎、黒田清輝、久米桂一郎の師であったラファエル・コランの作品を見ることができ、1点1点をじっくり観察するとあっという間に時間が経ってしまいます。
フロア内ではスマホ使用ができません。メモを取るにも筆記用具がなくて困っていたら、美術館スタッフが声をかけてくれて鉛筆とボードを貸してくれました。
質問しやすい雰囲気なのも、小規模な美術館ならではの良さだと思いました。
スタッフからは、「今日は常設展はなく、教え子展なんですよ」と解説がありました。
しかし教え子といっても、日本美術史の重鎮ばかり。
日展の審査員や顧問、美術館の顧問、大学の名誉教授、藍綬褒章や紺綬褒章の受章者など、功労のある方々の作品が並んでいました。
久米美術館は昭和57年10月に開館。開館10周年を記念して、教え子たちが自分の作品を寄贈したのが、この展覧会のはじまりだそうです。
久米桂一郎に関する図録の展示も充実
展示室の外には、絵ハガキの販売コーナーや図録の展示コーナーがあります。
図録は自由に読むことができました。
図録によって、久米桂一郎の作品だけでなく人柄もよく分かります。
東京美術学校で黒田清輝は油絵、久米桂一郎はデッサンの科目を担当。
久米は学究的で、人体構造の知識を教えるために解剖学も指導していました。写実や造形による人体表現の基礎とともに、非現実的な人体を描くことでどんな特殊な美術効果が生まれるかまで解説したそうです。
研究成果によって「美術解剖学」を確立し、森鴎外との共著も残しているほど。
そんな研究成果の一方で、学生の試験にも厳格で、0点を付けることもあったというエピソードも知ることができました。
目黒駅までショッピングに来たら、ぜひ立ち寄って
久米美術館は、目黒駅から徒歩約1分という絶好のロケーションにありながら、周辺は高級住宅街という上品な雰囲気がただよう美術館です。
開館が17時までなので仕事帰りに行くのは難しいかもしれませんが、休日のお出かけにはピッタリ。
久米桂一郎は美術教育や美術行政など、実務家として歴史に残る人物で、画家として日本史に名前が出ることが少ない人物だといいます。しかし、美術館があることで、郷土の歴史や芸術を知りたい人に注目されているそうです。
季節に応じて展示替えがあるという久米美術館。今後もさまざまな企画展が開催されるのが楽しみです。
久米美術館
住所:東京都品川区上大崎2-25-5 久米ビル8階
アクセス:JR山手線「目黒駅」徒歩約1分
電話:03-3491-1510
営業時間:10:00~17:00 入館は16:30まで
定休日:月曜休館 ただし祝祭日は開館、翌平日休館
駐車場:なし